1年生は最も大事な時期
小学校に入学し、1年生は初めて本格的な勉強が始まる年でもあります。
子どもたちは何もかもに興味津々で、勉強にもとても意欲的。「早く勉強したい!」「もっと勉強したい!」という想いで溢れています。そんな1年生の学習に対して、「内容も簡単だし、幼稚園で先取りしてきたわ。勝負は2年生からね!」とおっしゃる保護者に、私も何度も出会ったことがあります。
しかし、実は1年生の学習というものはとても重要で、小学校6年間の中でも最も大事な時期なのです。私自身、小学校で教鞭をとってきましたが、6年生を教えていても、1年生の学習の大切さを痛感します。これから中学・高校・大学と続いていく教育環境を支える、最も基本的なことを学ぶ1年ですから、ここをおろそかにしてしまうと、途端に2年生、3年生…と今後の学習でつまずくことになってしまいます。
1年生の学習で大切な癖付け
1年生の学習全般の中で最も大切なのは、「学習する癖を身に付ける」ということです。小学校の授業は45分続きます。椅子に座り、机に向かって読み書きし、板書を写す。入学前は遊びの中で学ぶことが多かった子どもたちの生活が大きく変わります。ここで「勉強=大変」というような感覚が根付いてしまうと、ここから先はもっと苦難の連続です。知る喜び、わかる楽しみを実感していけるような学習の癖付けができると良いですね。
算数という教科
主要4教科の中で、算数は積み重ねがより必要になってくる教科と言えます。また、算数の苦手意識を持つ子は多く、一度持ってしまうとそれを克服することは容易ではありません。子どもが算数に対して苦手意識を持つ大きな理由の一つは、「学習の中できちんと理解しきれず、なんとなく乗り越えてきている」ということです。一つひとつの課題に困難さは小さくとも、小さな疑問や解きにくさをその都度克服しないままでいると、学年が上がるたびに困難さは大きくなります。
数の概念をつける
さて、そんな積み重ねの大切な算数学習、1年生の中で特に大切なのは、「数の概念をつける」ということ。1年生では、数は段階的に100までの数を学びます。
よく保護者の中でも勘違いしておられる方が多いのですが、数の概念というものは、「1,2,3…」と順に数えて「8」と答えられる、ということではありません。簡単に言うと数字の「8」を見てりんご8個のイメージができるかということです。
数というのは具体的に目に見えるものではないので、抽象的な理解になります。そのため、今まで具体物を相手にしてきたこの年頃の子どもにとっては、非常に乗り越えるべき壁が高いのです。「3+2=5」と覚えてしまえる子は多いですが、数の概念ができていないと、応用が利かない小手先の技でしかありません。小手先の理解だけでは、この先の算数学習は困難を極めます。また、この数の概念がついていない3年生や4年生が実は想像以上に多く、数の概念が付いていない子ほど算数の苦手意識が強いのもまた事実です。
お家でできる数の概念の定着方法としては、日常生活の中で「これ、いくつある?」など、数と身近に接するようにすると良いです。その際、10までの数がスムーズに出てくるようになっているなら、指や「1,2,3…」と数えるのを控えるよう話し、「どっちが早く言えるか、お父さんと競争ね。」など、ゲーム感覚を加えると、より楽しみながら早く成長を促すことができます。
ふたば問題集の中でも、この数の概念を習得できる章を多く用意しています。第1章『0から10までの かず』、第7章『10より おおきい かず』のうちの「11から 20までの かず」 「20より おおきい かず」です。ぜひ子ども達の学習に役立ててください。
繰り上がりのあるたし算、繰り下がりのあるひき算
もう一つ、1年生の算数学習の中で重要な位置付けにある学習があります。それが、繰り上がりのあるたし算、繰り下がりのあるひき算です。ここは子どもたちもとてもつまずきやすい課題となっていますので、しっかり時間をかけて向き合う必要があります。特に、これが「なんとなくの理解」で進んでしまうと、かけ算の筆算やわり算の学習にまで影響が及んでしまいます。
繰り上がりや繰り下がりをするとなると、更に数の概念の理解ができていることと、「10の合成」「数の合成・分解」が定着できているかが大前提となります。「10の合成」とは、「10」がいくつといくつに分かれるかということです。「数の合成・分解」とは、「15」という数字を見て「7と8」という具合に、どの数とどの数でできているのかを素早く認識できることです。これが繰り上がり、繰り下がりのある計算を根底で支える力となります。
第3章『いくつといくつ』で学ぶことができますので、こちらも重点的に学習することをお勧めします。
繰り上がりや繰り下がりの学習には、何度も繰り返して算数ブロックや指などの操作をして、学習の定着をはかるように促します。前述しましたが、この時期の子ども達は具体物を相手にイメージしてきた発達段階から、抽象的な数の計算に順応していくため、大きな発達の壁を越えようと頑張っています。その順応をスムーズにするために、ブロックや指操作は必要な物です。課題をいくつもこなしていると、そのうち、ブロックも指操作もなしでできるようにはなるのですが、この学習の定着には個人差ももちろんあり、2年生や3年生になってようやく何も使わずに計算ができるようになる子も多くいます。この課題に関しては、長い目で取り組む姿勢が大切です。
繰り上がりのあるたし算は、第11章『たしざん』の中の「たしざん(こたえが 10いじょう)」で学習することができます。繰り下がりのあるひき算は、第13章『ひきざん』の中の「ひきざん(10より おおきい かずから ひく)」で学習することができます。
まとめ
子どもの理解の進度は、皆同じではありません。
理解することに時間がかかっているように思っても、算数が苦手ということでもなく、コツコツ乗り越えていくことが、その子の大きな力になることはよくあります。スムーズこなせる子は、大きくなってからつまずいてしまった時に、自分の課題との向き合い方がわかりづらくなってしまうこともありますので、課題の振り返りをして、一つひとつ理解できているのかをチェックすることをおすすめします。
1年生は勉強の癖付けがしやすい時でもありますから、できるだけ、ご褒美が待っているなど、楽しんで乗り越えていけるように促してあげてください。